商標権活用の一例(表現の巧妙さに感心しつつ、少しモヤっとした話)  

困っている弁理士

先日、お客様との打ち合わせの中で、広告表現についてのお話しをお聞きしました。
とても興味深いお話しでしたので、私自身の考えも含めて紹介したいと思います。

その広告は、ある製品のネーミングと、商標権取得済みであることを前面に押し出しつつ、まるでその製品自体が商標権で守られているかのような印象を与えるものでした。もちろん、商標は「ネーミング(文字)」や「ロゴ」などの識別標識を保護するものであり、製品そのものの機能や構造を直接保護するものではありません。

具体的な広告表現は、以下のようなものです。

「この○○(製品名)を使えるのは当店だけであり、模倣品にご注意ください」

正直、「うまい(巧妙だ)なぁ」と感心しました。
あくまで製品名(商標権)に対して言及しつつ、製品自体の独占性を消費者や競合他社に印象づけられる表現です。
大半の皆さまは知的財産権のことをよく分からないことが多く、この広告表現に触れた方は以下のようなイメージを持つと思います。

【消費者目線】
この製品名のものは正規品なので高品質(逆に違う製品名のものは模倣品で粗悪)なので、買うならこの製品名のもの。

【競合目線】
「権利取得済」って書いてるし、(この製品名に限らず)この製品を売ると訴えられるかも…、この製品の事業は止めとこう。

一方で、「ちょっとずるいかも…」という気持ちもあります。
商標の本来の役割を超えて、あたかも製品そのものが権利で守られているかのように見せる表現です。
製品名に対する言及ではあるのですが、上記のような印象が生じ得る以上、法的にはグレーゾーンなようにも思えます。

特にECなどに関するマーケティングの現場では、こうした印象操作とも取れるプロモーションが行われているのも事実なようです(そこまでしないといけないほど、生き抜くのが大変…?)。

弁理士としては、こうした表現に対して「それはちょっと誤認を招くかも…」と指摘したくなる一方で、「商標の使い方としては非常に戦略的だな」とも感心してしまうケースでした。

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